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成猫を譲渡する難しさ

7月23日。この日は新玉旅館2階譲渡部屋にいる、ニッパチ君のトライアルの日でした。


里親希望者さんには以前先住猫ちゃんがいて、その子はエイズ白血病ダブルキャリアの子だったらしく、免疫力を維持させる為に、2週間に1回は病院通いをして適切なケアをされていたそうです。こうして我が子のように最期まで献身的なお世話をして看取った経緯があるとお聞きしました。


その猫ちゃんがリンちゃんにそっくりな黒猫ちゃんだったらしく、始めはリンちゃんを希望していました。ただ、リンちゃんはまだ人馴れしていない事から、ニッパチ君をお勧めしたようです。


人見知りもせず、人間大好きで誰にでも人懐っこい性格のニッパチ君。新しい環境でもきっと大丈夫だろうと皆が思っていました。

この日、キャリーを用意すると毎回恒例のおもち君が入ろうとするのを女将さんが阻止しながら、ニッパチ君はすんなりと中に入っていきました。


里親希望者さんの自宅に同行する際、車の中でニッパチ君は終始不安げに鳴いていました。元々車が嫌いらしいので、早く自宅に着いて落ち着いて欲しいと思っていました。

ご自宅では、ご家族が過ごされるリビングにニッパチ君が寛げる場所を何ヶ所も作ってくれていて、猫ベットやトイレ、器等も準備万端でした。




不安気で落ち着きのない様子のニッパチ君を弟さんが抱きしめて、「ニッパチ、今まで沢山の仲間たちを守ってきた分、今度はお前が幸せになる番やぞ!」と語りかけていました。


ニッパチ君は多頭飼育崩壊の現場で、外猫から仔猫達を体を張って守っていた姿を弟さんは見ていました。だからこそ、ニッパチ君には幸せになって欲しい思い入れは強かったと思います。

ただ、心地よい環境を用意されていたにも関わらず、ニッパチ君が鳴き続けていたのが気がかりでした。 翌日、その予感は的中して、ニッパチ君はたった一晩で戻ってきてしまいました。やはりあれからずっと鳴き続けていたそうで、仲間を探しているような様子だったそうです。 仕事の為、そんなニッパチ君を独り留守番させる事が心配で心配でたまらなかったらしく、新玉に預けて帰りにお迎えに行く予定にしていたそうですが、ニッパチ君のストレスを考えると可哀想になり、話し合いの結果戻す事になったそうです。

にゃんたまチャンネルライブ配信より


戻ってくると部屋にちっこいのがいて複雑な様子のニッパチ君 仔猫は月齢が低いほど順応性が高く戻ってくる事は殆どないですが、成猫になると新しい環境に馴染めずに戻ってくるパターンがあります。ご飯を食べなかったりトイレを我慢したり、ずっと鳴き続けたり。かと思えば、この子は難しいなと思っている子が意外と平気だったり。こればかりはトライアルしない事にはわからない事です。 今まで沢山の猫ちゃんのトライアルから譲渡までの過程を見てきましたが、猫は仲間や兄弟姉妹の絆が深く、その期間が長くなればなるほど、仲間同士を引き離してしまう事でストレスや不安に繋がり上手くいかないケースがあるのは確かです。 その為、仲良しペアでお迎えして貰う事をいつも推奨しています。 ニッパチ君はこれまで常に多頭の中で生きてきて、仲間を守ろうとする使命感が強く、自分だけが幸せになる事より仲間を見守っていきたい性分なのかも知れません。ニッパチ君は、ただ可愛くて人懐っこいだけの猫ではなく、過酷な経験をしてきた分、繊細で複雑な思いを秘めている猫ちゃんなんだと改めてそんな風に感じました。


今回の里親希望者さんは、マンションの規定で2頭飼いが出来ないそうなので、今後1頭でも大丈夫な相性の合う猫ちゃんを慎重に選び、譲渡まで繋げてあげられればと女将さんも考えているようです。 猫の為に、どんなにお金がかかっても適切な医療にかけて下さり、少しでも元気に長く生きて欲しいと愛情を注いでくれる、そんな方の元で保護猫たちは幸せになって欲しいと願っています。

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